東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の発生から1年となりました。被災された方々はもちろん、われわれ研究者も激動の1年でした。しかし、今もなお日本各地で頻繁に地震が発生しています。
この1年間(昨年3月~今年2月)に日本列島周辺で起きたマグニチュード(M)2.0以上の地震は約7万でした。同じ範囲で一昨年の3月から昨年2月までの地震数(約1万2千)の6倍です。ほとんどは東北地方太平洋沖地震の震源断層、すなわち東北地方の東側の沖合のプレート境界近傍で起きた余震です。本震がM9.0の超巨大地震だったため余震活動も非常に活発で、6回のM7級の大きな余震がありました。しかし余震活動の推移には一定の法則があり、今回も時間とともに順調に減っています。
一方、震源域から遠く離れた内陸側でも地震活動が活発になりました。東北地方太平洋沖地震発生直後に秋田沖や長野県北部、静岡県東部などでM6級の地震が立て続けに起き、4月には福島県いわき市付近でM7.0の地震がありました。活火山の周辺でも小さな地震が増えるなど広域で影響がみられましたが、5月ごろまでに多くの場所で沈静化していきました。
しかし、いわき市周辺や秋田県内陸部などでは活発な活動が続いています。超巨大地震の発生で、日本列島にかかっていた力の向きや大きさが変わり、従来地震をあまり起こさなかった場所が活性化したものと考えられます。
京滋に住むわれわれは、有感地震が増えた実感はありません。上の図の範囲内で起きたMl.0以上の地震は、この1年間で1154個でしたが、その前の1年間は1024個とほとんど増減がありません。今のところ東北の地震の影響は近畿地方まで及んでいないようですが、これに安心することなく東日本大震災の教訓に学び、来るべき南海トラフの巨大地震に備えるようにしたいと思います。
(片尾 浩・京大防災研地震予知研究センター准教授)京都新聞2012/03/13より