先月は、関東と関西での地震の起こり方の違いを紹介しました。プレート境界の巨大地震だけを見ても、関西の方が発生頻度が高いです。
プレート境界の巨大地震の前後に、内陸で地震活動が活発化します。個々の断層での発生頻度は、1000年とか数千年、長いものだと数万年に1回程度と非常に低いものです。そのため、自分の足元で大地震が起こる確率は低く計算されますが、関西は関東に比べてけた違いに活断層の数が多いです。プレー卜境界の巨大地震の頻度が多い上に内陸の活断層の数も多いため、関西では地震のリスクが非常に大きいことになります。
とすると、われわれの足元にある個々の活断層で、内陸地震が差し迫っているのか、それとも、しばらくは大丈夫なのか大変気になります。
そのことを知る上で現在最も重要な知見は、活断層の活動履歴です。阪神・淡路大震災の後、全国の主要活断層が調査され、それぞれの活断層がいつごろ動いたか、平均的な発生間隔はどれくらいか、などが明らかになってきました。平均的な発生間隔に比べて最新の活動時期からの経過時間が少ないほど、その活断層で内陸大地震が発生する確率は低いことになります。
個々の活断層で活動履歴のデータの精度を上げることが、われわれの足元で内陸大地震が迫っているかどうか判断する上で極めて重要です。しかしながら、活断層は内陸大地震の結果として地表に表れるもので、大地震の一部を見ているにすぎません。大地震が起こっても、断層が地表に表れないこともあります。
活断層の活動履歴には、見逃しがあることを念頭におく必要があります。現在知られているよりも、内陸大地震はたくさん起こっている可能性があるわけです。
(飯尾能久京都大防災研究所地震予知研究センター教授)
京都新聞より