先月は、日本列島の地殻に働く力は場所によって異なり、近畿や中国地方では東西に縮み南北に延びる横ずれ型の地震が、東北地方では東西に縮み上下に伸びる逆断層型の地震が多いことを紹介しました。
花折断層は滋賀県の高島市から京都市東部へ伸びる右横ずれ型の断層です。右横ずれとは、断層のずれの向きを表したもので、断層のこちら側に立っているとき、向こう側が右側にずれることを示しています。これは、花折断層がほぼ東西の圧縮の力を受けていることによります。
一方、その東には、琵琶湖西岸断層帯が高島市から大津市付近まで走っています。地表トレースは、大局的には、花折断層とほとんど同じ向きを向いていますが、この断層は逆断層型です。断層の西側の比良山地が琵琶湖に対して隆起しています。花折断層は、少なくとも地表付近|ま、ほぼ垂直であると考えられています。琵琶湖西岸断層帯は、西へ向かって深くなる西傾斜の断層であり、深さ数キロまでの傾斜は40度程度と推定されています。
これら二つの断層の地表トレースは、近いところでは10キロも離れていません。
花折断層が地下深くまで垂直であり、琵琶湖西岸断層帯も地下深くまで同じ傾斜であるとすると、両者は、花折断層の深さ10キロ付近で交差することになります。
断層が交差するとお互いにずれにくくなりますので、これは考えにくいです。これらの断層が地下深くでどのような位置関係にあるかを調査中ですが、まだよくかっていません。
(飯尾能久・京大防災研地震予知研究センター教授)
=第3水曜日に掲載します
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