産業技術総合研究所と広島大学などの研究グループは、東海、東南海、南海の3地震が連動して起きた宝永地震(1707年)の400~600年前にも、太平洋沖の南海トラフ沿いで巨大な津波をもたらす同規模の地震が起きていた可能性があることを突き止めた。千葉市で開催中の日本地球惑星科学連合大会で25日までに発表した。海岸にある岩に付着した生物化石を調査して明らかにした。
江戸時代以前の地震の記録は限られており、広い範囲で生物化石の調査を進めていけば、政府の地震調査委員会による地震の長期予測に活用できる可能性もある。
和歌山県串本町の海岸に散らばっている、巨大な津波でなければ押し流されることのない大きさの岩を調べた。通常は下面に付着するカキやヤッコカンザシなどの化石が岩の上面で見つかった。津波が押し寄せて岩がひっくり返り、岩の下面が上を向き、付着していたカキなどが化石化したと分析した。
化石の年代測定をしたところ、1120~1340年ころと1650年以降に集中していた。1650年以降と測定された化石は、伊豆から九州にわたる広い範囲で大きな被害をもたらした宝永地震の津波でできたとみている。産総研などは、化石の分析結果から「南海トラフ沿いでは400~600年の間隔で(宝永クラスの)巨大地震が起きている」としている。
南海トラフは駿河湾から四国南方にかけての海底にある水深4千メートル級の深い溝(トラフ)。紀伊半島や四国など西日本が乗るユーラシアプレートと、南から押し寄せるフィリピン海プレートとの境界線にあたる。南海トラフの北寄りの領域では2つのプレートが押し合うため、大規模な地震が繰り返し発生してきた。東海、東南海、南海の3地震の震源域としても想定されている。
5月26日日経新聞より