花折断層による京都盆地の強震動予測

京都盆地は東山、北山、西山という言葉が使われることからも明らかなように、東西と北方は山に接し、南だけが開かれている地形を有している。そして、これらの山麓にはいくつもの活断層が展開しており、まさに京都盆地は断層によって形づくられていると言ってよい。一方、2001 年に国と京都市により実施された京都盆地の地下構造探査の結果、盆地の南方を東西に流れる宇治川の直下に巨大な伏在断層が見つけられた。これにより、京都盆地は東西、南北のいずれもが、活断層によって囲まれていることが明らかになった。このことは、京都の地震対策の策定に際しては、盆地の境界を形成する活断層を抜きにしては、何事も為し得ないことを意味している。
盆地の周囲に展開する活断層の中でも、盆地の北方50 ㎞程のところから、盆地の東北隅を経て街中まで達する花折断層が最も脅威となるものと考えられている。また、この断層は歴史遺産の集積度の高い東山山麓に強い影響を及ぼすであろうことから、文化遺産の地震被害を論じるに際して、この断層の活動による地動を検討の対象とすることが肝要である。

submit-j_v07n05_070504

…震度の大きなのは山麓部や巨椋池近辺など、地下構造の急変するところである。これは1995年の阪神淡路大震災に際して、震災の帯と称される地域が六甲山麓から平地部への遷移領域であったのと同じ理由によるものであり、この現象がここでも再現されている。
この結果によると、京都盆地の東北部において計測震度が7に達する部分が多く見られるが、これは花折断層が盆地の東北隅から盆地に入り、東山山麓から南方に延びることによるものである。そして、この地域は上述のように山麓であることから、堆積厚が急変することによる増幅効果とが相俟っていることが原因であろう。
一方、盆地の西、特に嵐山近辺では計測震度は5 程度であり、これは被害があったとしてもそれほど大きくはならないと判断される揺れである。このように、花折断層のような内陸の断層の活動による地震では、断層の近辺では強い揺れを示すが、断層線から10km も離れればそれほど強い揺れにはならず、断層近辺では激甚な揺れを伴うが、その範囲は限定的であるという内陸の活断層の特徴をよく表しているものである。

日本地震工学会論文集 第 7 巻、第 5 号、2007 「花折断層による京都盆地の3 次元非線形有限要素法による強震動予測」 より
http://www.jaee.gr.jp/stack/submit-j/v07n05/070504_Paper.pdf